リンクトインをビジネスに利用するならフォーカスが必要ですね。フォーカスすると、限られた時間を有効活用することが出来ます。そして、よりお客様視点中心の活動ができるようになります。そのために必要な重要なフレームワーク、The value proposition canvasを紹介します。テンプレートはこちらからダウンロード出来ます。このリンク先は、発明者のAlexander Osterwaldeが作った会社のWEBで、便利なことに日本語字幕の動画が用意されています。
ではなぜこのThe value proposition canvasが優れているのでしょうか?
MBA等ではThe value proposition canvasビジネス分析に利用されます。マーケティングやビジネスモデル、商品を検討する際に利用され、通常はLean CanvasやThe business model canvasと併用されます。他のCanvasと比較して優れている点は
- 利用が簡単
- 理解しやすい
- お客様中心の考え方を学べる
- すぐに応用出来る
からです。Canvasはどの例でも簡単だと説明されますが、実際はビジネスや開発に関わる多くの関連事項についての理解を求められます。また作成直後の内容は未熟な場合が多く、今後の理解が進むことに対してのワクワク感はありますが、複雑だという印象は残ります。
その一方、The value proposition canvasは取り扱っているサービスや商品そしてお客様が対象ですので、お仕事をしている上で非常に基本的な要素のみにフォーカスしています。実際にMBAで扱い場合は、この3つを利用しますが、混乱が一番なく限られた授業時間内で消化可能なのはこのThe value proposition canvasです。
EMBAの卒論向けのビジネスモデル検討で利用したThe value proposition canvas
実例を見てみましょう。これはEMBA(Executive MBA)の卒論検討のために用意した初期のモデルです。この当時は、構想の初期段階で、このカンバスを見ながらチームで検討を実施しました。
ビジネスは高等教育(大学院以上)を提供している私学に対して、ネット上における生徒の評価の分析と、対応策の提案と実行です。通常生徒は学校のランキングを重視します。提供している場所、内容、金額は勿論大事ですが、やはりランキングの高い学校に関心が行きます。となると学校はランキングを上げることに注力しますね。
生徒の入学時の期待値は非常に高いのですが、なかなかこの期待値に在学中に応えることができないのも実情です。生徒はからの要求は高いですし、学校側は私学ですから、「コースを売る」ことは大事です。ここに様々にミスマッチが生じます。典型的な生徒からの苦情は
- 入学前の理解と現実が違う
- こんなに勉強しなくてはいけないのか
- 授業の質
- アドミンの質
- クラスメイトの質
- 施設の質
と非常に様々です。これらを数値として集めて、総合的に検討できるプラットフォームを目指しています。
最初は右のお客様から始める
最初は右の項目から始めるは、非常に大事なヒントです。Customer Jobから始めるのですが、Value Proposition Canvasで大事なお客様のターゲット層を確定することにより、よりシャープな分析ができます。ここが「だいたい」ですと、結局よくわからないValue Proposition Canvasが出来上がります。
ここではターゲットが教育機関です。ですので、右の Customer Jobsは学校の仕事を、ここでは3つあげています。この場合はミッションと言い換えても良いと思います。
- ランキングの向上
- 生徒数の増加
- ブランド力の増強
そして、この卒論で最も焦点を当てた「生徒の満足度」が入っていません。生徒の満足度を上げることがどれだけ商業的なインパクトがあるのか、今まで分析ができていなかったのです。これがこの卒論のチャレンジで、この次のThe value proposition canvasには記載されています。同じ円の中にはGainsとPainsがあります。Gainsは学校が前述の仕事を成し遂げたら得るもの、Painsは仕事を達成するのに困難な事です。
このCanvasを作るこつは、最初から100点を狙わない事。どんどん記載していくうちによりよりアイディアが出たり構成を変えることになります。そしてそれが正しい姿です。企業研修でこのカンバスの最初のバージョンを完成させようとすると、数時間かかります。意外に時間がかかるものです。しかし、ここで頭の中の整理をしておくことは非常に有効で、リンクトインをビジネスに活用していこうとする際に非常に大きな成果を生みます。
次は左の自社について分析する
一旦右のお客様の円が埋まりますと、それに応ずる形で左の自社の枠を順に埋めていきます。Gainをより増加させるためには何が提供出来るか、お客様の痛みを和らげるにはどんな解決方法をご提案できるのか等を埋めていきます。順番はないのですが、通常は痛みを取る方から埋まっていきますね。実は右のお客様のところもPainsから、埋まっていきます。
こうして一旦提案がまとまると、理想的な商品やサービスが左のサービスに記載出来ます。ここで現状と理想の差が出ます。ここ面白いところですね。
一般に売りたい商品と、お客様が利用したい商品は違います。これは絶対売れると思ったものが売れなかったかことは経験があることでしょう。お客様中心といいつつ、いつの間にか売りやすい物や、利益率の高いものを、お客様に提案して、本来のお客様の課題解決が後回しになっているかもしれません。売れているうちはまだ良いのですが、競合が黙っている筈はなく、製品開発力の低下や市場との方向性がずれて来ることでしょう。
The value proposition canvasをリンクトインのビジネスに活用する
リンクトインをビジネスに活用する場合に最も重要視する点はエンゲージメントの発生です。エンゲージメント多くの場合、営業活動発生するのではなく、メンバーとのポストやコメントを通じた会話から発生します。メンバーが、「この人は専門家だ」とか「信用できそうだ」と思うと、よりビジネスに近いエンゲージメントが発生します。リンクトインで営業活動から始めようとする人がいますが、多くの場合痛い経験をします。誰もセールスマンを求めていないからです。その一方、自分が抱えている問題解決をしてくれる人を探しています。製品やサービスを売るのはだめ、その一方問題解決は歓迎と、一見すると似ていますが、その両者は大きく違います。その違いは
販売中心なのかそれとも顧客中心主義なのか
という事です。顧客中心主義だと、上述の専門家と信頼が出来やすく、パーソナルブランディングも同時達成出来ますね。その一方販売中心であれば、セールスマンというイメージで終わってしまいます。これは大きな違いです。
ではどのようにリンクトインでThe value proposition canvasを活用するのでしょうか?それはエンゲージメントの基本であり、継続上最も困難なポストの作成に利用するのです。
The value proposition canvasをリンクトインのポストの作成に活用する
従来の売るもの中心のプロモーションは、限界があります。何しろ巷には情報や同種のサービスや商品が溢れています。お客様が購入に際して真っ先に行うことは、ネットで検索です。ですので、商品やサービスのプロモーションの訴求方法が従来とは大きく異なります。売るから問題解決への方向転換が必要とされています。
そうだとすると、問題解決のための情報を提供するのはどうでしょうか?幸いなことにThe value proposition canvasのPainsには、お客様の抱えている課題が明記されています。ここがこのCanvasの優れている点の一つです。また、Gainsをネタにする事も可能ですね。よりお客様の成功を補助する情報提供が出来るはずです。
どちらのケースでもエンゲージメントで得られる声は非常に大事で、それらのフィードバックをThe value proposition canvasに反映し、よりシャープでフレッシュな視点でビジネス検討することが出来るでしょう。
この様にThe value proposition canvas はビジネスに関わる人にとって非常に有益なツールであり、リンクトインのビジネス活動には欠かせないのです。
The value proposition canvasは研修に最適なフレームワークです。こちらの「社内でリンクトイン営業研修を行うならここに注意しょう」にMBAで利用するフレームワークとして紹介されています。
Lean CanvasとBusiness model Canvas
スタートアップでは必須のLean CanvasですがBusiness modele Canvasと類似しています。実はBusiness model canvasから派生したのがLean Canvasなんです。例えば下記の図はLean Canvasです。これは前述の卒論テーマのために作った初期モデルです。
続けてBusiness model Canvasを見てみましょう。こちらも少しだけ時期は異なりますが、対象テーマは同じです。
利用してみての違いですが、Lean Canvasは動きが早い変化により対応しやすいことと、対象顧客にアリーアダプターとあるように、セグメントに変化があります。すでにお客様がいらして、現状のビジネスモデルの振り返りと改善であればBusiness Canvas、動きの早い市場であったり、アーリーアダプター狙いであればLean Canvasといったところでしょうか?
ビジネスフレームワーク利用のこつ
こんな時MBA等の教育機関の意義があることを実感します。これらのカンバスの習得には数の練習が必要です。読んだだけではまず実戦には使えません。企業向けの研修ですと、どうしても取り扱うのは、対象企業の1社だけになってしまいます。そしてなんとなくの理解で腑に落ちる方は多くありません。
複数の例を実際に取り上げることで、カンバスに対する学習曲線はグッと上がります。半年程の期間を経て同じ修士のクラスを担当したのですが、ビジネスカンバスをケースからあっという間に作っていました。以前はこれらのカンバスを知らず、苦労していたのが嘘の様でした。聞くと2桁に近いケースをカンバスで分析したとのことでした。
リンクトインで「#リンクトイン活用」検索を行うと、科学的なアプローチを中心としたヒントが多く見つかる