1.EMBAのプレゼンテーションとは
部屋数でスペインNo1、持続可能性で世界No1のホテルチェーン、International Hotel Melia(<-上場名。一般的にはMeliaと呼ばれている)をお題にしたグループプレゼンテーションを6週間の準備期間を経て、先日グループ毎に発表した。MBAのプレゼンテーションのイメージは、「すば抜けてすごい」が当事者になる前の印象であった。教壇に立って分かったのが、時々ぶっ飛びのプレゼンはあるが、一般的には普通という事だ。グループプレゼンテーションの成功の可能性は、メンバーとお題で決まる。そして採点は担当教授の好みで決まる。
ここでは対策方法のみならず、どのような授業が行われているのかイメージ出来るように全体像を含め記載してみた。
2.EMBAでのグループプレゼンを成功させるための秘訣
早速、結論から述べてみたい。EMBAでのグループプレゼンを成功させるためのポイントは、以下の通りだ。
- 採点者である教授の好みを知ること
- グループメンバーとは協力の精神を尊重するが、依存しない。自分一人で全てを行う気持ちは必要
- メンバーへの忍耐力
- プロセスを楽しみ、結果に固執しない
目次
- EMBAのプレゼンテーションとは
- EMBAでのグループプレゼンを成功させるための秘訣
- EMBAとは
- チームメンバー構成
- 提出物
- ケースについての初期検討
- リモート共同ワークでのチャレンジ
- 次回に向けてのメンバーの課題
- 大学院の課題
- MBAケーススタディ部へのお誘い
- 53歳のMBAチャレンジに関するポスト
3.EMBAとは
EMBAとはExecutive MBAの略称で、社会人向けの週末MBAを一般に意味する。週末は10時間のクラスが用意され、MBAと同様のさまざまなトピックを扱う。平均年齢は30-35歳。受講中のEMBAはスペイン語で行われる。そのためスペイン人中心だが、中南米からも生徒も多い。そして欧州からスペイン語が出来る生徒が少人数ではあるが参加している。通常は30名弱ほどの規模だが、COVIDの影響で今年は15名ほどで始まった。
私が参加しているEMBAはスペインの中堅ビジネススクール ESIC Business & marketing School。各都市にキャンパスがあり、バルセロナ校へ通っている。自宅から校舎まではバイクで15程だ。
4.チームメンバー構成
チームメンバーは3−4名で、学校側が任意で決める。このメンバーは18ヶ月の学期中3回の変更がある。メンバー選択の自由はない。メンバーのエネルギーによって、成果物が大きく変わるのは、仕事でも一緒だろう。EMBAの場合、圧倒的に相手を知る機会がない事は大きなチャレンジだ。学校だけで顔を合わせるのみ。そしてそれがリモートの場合もある。COVIDのため、気軽に話すことも出来ないし、学外で会うこともない。そしてMeetingはオンライン。お互いの、バックグランドや能力について知る機会もなく、なぜEMBAを、そしてどのくらい本気でやりたいのかも不明。仕事との違いは、プレゼンに失敗しても失業することはないことだろう。
どのグループも慣れるまではしばらく時間が掛かるはずだ。異なるメンバーとの組み合わせが3回あるのは、チームマネージメントを学ぶ上で良い練習になると思う。異なる才能を必ず発見することになるだろうし、仕事とは異なる縛りなので、その分自由な発想が生かせるはずだ。国籍が異なるメンバーだと、さらにこの状況は加速する。
5.提出物
今回の担当クラスは戦略関係で、20時間の授業の成果としてメリアホテルを取り扱うことになった。提出物は、「戦略を発表しろ」で、一応のガイドラインとレファレンス(参考資料へのリンク)をもらっている。
提出物はPDFで、期限内に学校のオンラインプラットフォームに上げる。このプラットフォームは他の学校でも利用しているオープンソースだ。そしてプレゼンはグループ毎に別れて、担当教授と対面して実施する。採点は後ほど送られてくる。担当教授は授業設計担当者達が決めるガイドラインに従う。担当教授には大きな授業運営の裁量が認められているが、ガイドラインと、共通の授業用のプレゼンがある。
ちなみに、私が教員として担当している他のマスタークラスでは、プレゼンはクラスメイトの前で実施することにしている。採点尺度には担当教授への自由度があるので、私の場合、生徒からの評価を含めその場でオンラインでGoogle フォームを利用して回収し、プレゼン終了後、自分の分の加点を実施して、その場で発表し、終了する。生徒からの採点は、事前にプレゼンの機会を利用して何度か実施しているので、採点精度は高く、評価は安定しているので、生徒間の納得度も高い。生徒の納得度が高いと、授業評価が高くなる。これは大事なことだ。
提出物の作り方は、当然コラボツール利用が良い。しかし、これはそのような環境の経験がある場合に限られる。実際はグループにより、差があり、PPTやXLSを交換をしているケースがある。53歳の自分でも、この事実には気を失いそうになる。しかしながら、どのケースでも最終的にはコラボツールに落ち着くはずだ。メリットの方が非常に多いのは明らかだからだ。ちなみに平均年齢が20後半まで場合は、この種のツールは大学で既に利用しているので、全く問題ない。またデザイン系のマスターでは問題ない。彼らの場合は、デジタルツールの利用は非常に進んでいて、「PPT」と言うようであれば、非難の視線を受ける。
6.ケースについての初期検討
次に今回のケースを見てみよう。メリアのケースを初期分析してみると、ビジネス企画と上場会社の数字の話。前者はなんとかなるにしても、数字を読むのに慣れていないクラスメイトは半数を占め、ファイナンスの授業はこのプレゼンの後に用意されている。この部分はタフになるだろうと予想された。また、ビジネス経験の有無と深さと、最終提出物のイメージより、作業工程に気が向くたり、他の細かな点に注意を払ったりする。この辺りは、話し合いをして見えてくる点でもあろう。資料を3時間ほど読み込んで、自分のプレゼンのイメージは出来た。最小の仕事量で、最大の効果を目指す。早速、チームミーティングのお誘いをGoogle meetする旨、連絡する。学校ではTeamsを提供しているが、使うメンバーは非常に少ない。Zoomの利用率は授業で利用していることもあり、当然のことながら非常に高い。
7.リモート共同ワークでのチャレンジ
リモートのよるグループ活動の課題については、メンバー同士をよく知らないことを前述した。「メンバーを知らない」を分析するとこのようになるだろう。
- 性格
- 能力
- EMBAへの考え方
- ビジネスの方向性
- 対応時間と日程への考え方
またグループ活動にはリーダーの存在が大事と言われている。決断者と同意義になるが、最初から決める必要はなく、プレゼンの方向性を決めていく上で自然と決まってくるだろう。最初から必要なのはファリシテーターで、彼の役目は、日程とTODOをFollow Upしていく事だ。ペースを掴むまでは、ファシリテーターがチームを引っ張っていく必要がある。人関係を作るのが上手な人が良いだろう。
性格は段々と分かってくるものである。例えば約束を守るかとか、時間にきっちりしているかとか、どちらもチームワークでは大事な要素だが、これを真に理解するには共有する時間と経験が必要だ。チームビルディングが有効な手段の一つであるが、COVIDとEMBAでは現状不可能である。
能力はランダムなチームなので、全く不明だ。これも真の実力を知るには性格と同様に共有する時間と経験が必要だ。しかしMBAを学ぶ場所として考えれば、お互いの成長の場所でもあるし、実社会で発生するケースを、失業の危険なしで体験出来ると考えれば、能力差を楽しむことが出来るはずだ。チームメンバーシャッフルは残り2回あるので、それほど落ち込むことはない。
考え方が違うことを前提にすると、自分がGive Upできる点とそうでない点がある方が楽にプロジェクトを進めることだろう。妥協と主張は大いに必要だ。黙っている必要もないし、我慢する必要もない。自分の思い通りに100%進まない事を前提にしたらいい。ただし、生理的に合わないケースはどうしようもない。そしてこのケースはよくある。
ビジネスの方向性は、まとまりにくいテーマではあるが、チーム内での戦略別アンケートを数値でとり、多数決で決めることのより、乗り越えた。質問事項の総数は100問ぐらいで、一緒に課題とフェーズを決めて行った。ここが見えてくると、随分と気持ちが楽になる。議論で決めるのではなく、点数評価でこのプロセスを行なったのは良かった。議論が建設的に進む。後日、戦略の変更が必要な場合でもここに立ち戻ると良いだろう。
例えば途中からなんとなく違う感じがする場合、それが致命傷なのかを、採点者の視点から評価することを我々の場合は行なった。純粋にビジネスの視点からというよりは、採点者(投資家へのピッチ)からみて、我々のプランは注意を喚起することが出来るかということだ。ボトムアップではどちらからと言うと、戦略を決めた時点で、トップダウン式に変更し、全ての資料はその戦略をサポートするためと位置づけた。
全スライドの見直しはドラフトと、デザイン統一をしたのちの2回行なった。1と2回目の見直しでは、スライドの数を減らし、文字を減らす作業時を行い、デザインに落としたのちは、スライドの順番と、より一層の減量を行なった。プレゼン作成時にはどうしても文字を入れ込みたくなるが、これはプレゼンの目的により、変更すべき点だ。今回は投資家向けの資料となっているので、議論のち、メンバーの同意を得て、変更が出来た。
プレゼン当日の3時間前に、スライドの見直しとピッチの仮練習を1回行う。自分的には1回だけでプレゼンに臨むのは自殺行為に思えるが、それでもやっておくだけでも相当違うだろう。ここで見つけた課題修正点を明確にし、その場で修正を実施して、本番に臨む。自分からのメッセージは「ゆっくりしゃべろう」。これは毎回大きな声で言っているのだが、浸透した試しはない。何しろみんなおしゃべり好きなメンバーだ。
週1回のグループミィーティングを実施して、最終週だけは追加で何度か必要に応じて行なった。全てオンラインだ。ミィーティング前の課題消化率は、期待値とは大きく異なった。しかし大きなストレスにならずに、進めることが出来た。
プレゼンは2名が現場、2名がリモートで実施。スタートは自分が担当した。ビジネスプランの数値をいじったメンバーが、もっとも大事なプレゼン後半のプランを説明した。担当教授からの質問をチームメンバーで問題なくこなした。質問は数値とブレのない戦略かどうかだ。数値は例えば、売り上げから始まって、客平均単価、キャッシュ、競合との比較、株価等について。そして戦略に関しては、投資家にとって、信頼度があるプランか、将来価値はあるのかについて質問だった。どの質問に関しても、我々は自信を持って答えることが出来た。
その場での教授からの評価は、「非常に良い」で、わかりやすく、納得感があったこと、スライドの構成や表現の仕方、数値に信憑性があるということだった。担当教授の好みに合わせたプレゼンはどうやら上手くいったようだ。
個人的にはプレゼンは発表するメンバーの自信度がどのくらい伝わるかが大きなポイントと考える。プレゼンの質は勿論だが、どのくらいどっしりと、自信を持ってプランを伝え、ワクワク感を放出するかであろう。たった一回の総合練習でここまで来れたので、10回程練習をしていれば、天地がひっくり返ったかもしれない。
8. 次回に向けてのメンバーの課題
私自身を含め、メンバーにとって今回は貴重な体験であったことは間違いない。お互いについてより知り合うことが出来たのは大きな成果だ。また結果的にプレゼンが上手に完了出来たのも大きな点であろう。次のグループ活動はもっと気楽で、テーマに集中し、そして深く突き進むことが出来る。次回のプレゼンへの課題は、計画性だと思う。学生病はここでも存在していおり、期限が迫ると全ての工程が急ピッチで進む。これはもうやりやたくない。
グループ活動での理想は、各自が得意な分野を請け負って、専門性が高く、ビジネス度が高い、美しく、素晴らしいプレゼンをハードワークの積み重ねで行う事だろう。アウトプットは一流のコンサル会社のプレゼンを目指すことではないだろうか。そしてもっとも重要なのは、人間的な成長を仲間との議論を通じて得ることだ。
現実的には不可能なケースと可能なケースの両方が現れてくるが、少しでも可能性を成功へもたらすのは、それぞれの個人の「目標達成する」という強い意志が基本にある。だから困難が目の前にあっても、黙ってはだめなんだ。Keep pounding! Thanks Marc!
9. 大学院の課題
運営の大学院の課題はいつくかある。生徒の期待値とアウトプットを最大に高めるためには、段階が必要だ。今回のメリアのケースはゴールが高過ぎたと思われる。学習した課題と全く異なる知見が必要だったからだ。改善点は以下の通りだ。
- クラス内でグループワークを取り入れ、そこで簡単なプレゼン作成を課題に入れる。これでリモート環境においても、より深みのあるグループ活動が出来る
- コラボツールを前提としてプレゼン。一気に振るべきだ。ファイルの交換はお笑い種だろう
- テーマを上場会社ではなく中小企業にして、授業の内容に反映させたゴールにする。株価や、キャッシュフローそしてその他の財務指標が関わるテーマは、その種の授業が終わった後で良いと思う。
- プレゼンは生徒からのフィードバックも取り入れ採点する。これは大事だ。お互いに成長するためには、このプロセスは大事だろう。
10.MBAケーススタディ部へのお誘い
実際に取り扱われているMBAのケーススタディと類似した例を一緒に学習しようという部活をAcademyInでは主催している。詳しくはアカデミーインクラブ活動 を参照願いたい。
部活は以下の4つがある。
- 3か月クラブ(部員募集中)
- 1週間コンパスクラブ(部員募集中)
- LinkedIn Creator部(部員募集中)
- MBAケーススタディ部(未公開)
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